居抜き物件の注意点|飲食店の内見で見る7項目
居抜き物件は、厨房設備や内装が残っているぶん初期費用を抑えられるのが利点です。ただ、内見で見るところを外すと、結局スケルトンから作るのと変わらない工事費がかかることがあります。判断の分かれ目は、残っている造作が自分の業態でそのまま使えるか、そして契約や手続きの面で「引き継げない部分」がどこかの2点です。ここでは飲食店の居抜き物件を内見するときに確認したい7項目と、契約前に押さえておく許可・届出を整理します。
居抜きが安く済むのは「造作がそのまま使えるとき」だけ
居抜き物件の費用メリットは、前の店が残した厨房機器・空調・内装をそのまま使えることで成り立っています。裏を返すと、業態が違って厨房のレイアウトを組み替える、加熱機器を増やして排気を増設する、客席の作りを変える——といった変更が入るほど、メリットは目減りしていきます。
造作譲渡料を支払ったうえで工事費が乗り、さらに中古設備には基本的にメーカー保証が残っていないため、開業直後の故障は自己負担になります。「居抜きだから安い」ではなく、「自分のメニューと客数計画に対して、使える造作がどれだけあるか」で判断してください。前の店の設備に合わせてメニューを決めるのは順番が逆で、業態が定まらないまま物件を先に押さえると調整が効かなくなります。業態やメニューの組み立て方は業態開発・商品開発のページでも触れています。
内見で見る7項目
図面と写真では判断できない部分が多いため、内見では次の順番で見ていくと抜けが出にくくなります。可能であれば厨房設備業者や内装業者に同行してもらってください。
1. 電気容量と動力、ガスの引き込み
分電盤で契約容量を確認し、単相100V/200Vだけか、業務用の冷蔵庫やエアコンに使う動力(三相200V)が引かれているかを見ます。前の店より加熱機器や冷蔵設備を増やすなら、引き込みからの増設工事が必要になることがあります。ガスは都市ガスかプロパンか、メーターの号数が想定する機器の総ガス消費量に足りるかを確認します。いずれも見た目では分からないため、現地と書類の両方で当たるのが確実です。
2. 給排水とグリストラップ
シンクの水圧、排水の流れ、床排水からの臭いを実際に水を流して確認します。グリストラップは容量と清掃の状態を見ます。長く放置されていた物件では、配管の詰まりや床防水の劣化が解体するまで分からないこともあるため、「そのまま使える」と言われても現況の説明を求めてください。
3. 排気ダクトと近隣への影響
ダクトの経路と排気の出口がどこに向いているか、フードの能力が想定する火力に見合っているかを確認します。上階が住居の建物や住宅が近い立地では、においと音が営業開始後のトラブルになりやすい部分です。前の店で近隣からの申し入れがあったかどうかは、貸主や管理会社に確認しておくと後の判断材料になります。
4. 厨房機器の年式と所有権
造作譲渡に含まれる機器が、本当に前のオーナーの所有物かを確認します。リースの残債が残っている機器や、所有権が留保されている機器は譲渡の対象外になることがあります。譲渡リストは「品名・型番・年式・動作の可否」まで書面に落とし、内見時に電源を入れて動作を見せてもらうのが確実です。年式が古い機器は、使えたとしても数年内の入れ替え費用を計画に入れておきます。
5. 空調・トイレ・内装の劣化
業務用エアコンは製造年と能力を見ます。客席の広さに対して能力が足りていない、または年式が古く更新時期に近い場合、開業後に大きな出費になります。トイレは数・位置・清潔感を確認します。床や壁、天井は油汚れや水漏れの跡が残っていないかを見ておくと、原状回復の交渉材料にもなります。
6. 前の店が閉めた理由と客層のズレ
設備と同じくらい重要なのが、前の店が閉店した理由です。個人的な事情による撤退なのか、売上が立たなかったのかで、その立地の評価は変わります。曜日と時間帯を変えて周辺の人通りを見る、近隣の競合の価格帯と客層を確認する、といった足を使った確認は欠かせません。前の店の常連がそのまま自分の店の客になるとは限らないため、客層が想定とずれている場合は集客の計画を作り直す前提で考えます。
7. 契約条件(原状回復・造作譲渡契約・賃料)
居抜きで入っても、賃貸借契約の原状回復条項が「スケルトン返し」になっていることがあります。この場合、退去時に自分が引き継いだ造作の解体費まで負担することになるため、契約書の文言を一文ずつ読み合わせておいてください。造作譲渡契約と賃貸借契約は当事者が異なる別々の契約である点、賃料の改定条項、保証金の償却割合、フリーレントの有無も、内見と並行して確認しておきたい項目です。
契約前に確認しておく許可と届出
居抜き物件では、設備が残っていても手続きまで自動的に引き継がれるわけではありません。次の3つは物件を決める前に管轄の窓口へ相談しておくと安全です。
- 保健所の営業許可:造作だけを買い取る一般的な居抜きでは、新たに営業許可を取る必要があります。営業そのものを事業譲渡として引き継ぐ場合は、2023年12月13日以降、相続・合併・分割と同様に届出(地位承継届)で営業者の地位を承継できる扱いになりました(静岡県/川崎市)。ただし静岡県のページでは、譲渡後に事業内容や設備等に同一性が認められない変更が確認された場合は新規の許可取得が必要になるとされています。どちらに当たるかは事前に管轄の保健所へ確認してください。
- 消防への届出:東京消防庁の管内では、建物や建物の一部をこれから使用する場合、使用を始める7日前までに管轄の消防署へ防火対象物使用開始届出書を提出することとされています(東京消防庁)。同じページには、居抜きで前の設備をそのまま使う場合でも、工事を行うのであれば防火対象物工事等計画届出書が必要になると記載されています。内装工事のスケジュールに組み込んでおきましょう。手続きの細部は自治体で異なるので、管轄の消防署に確認してください。
- 深夜にお酒を提供する場合:深夜0時以降もお酒を出す営業(通常の主食にあたる食事を提供する営業を除きます)をするなら、所轄の警察署を経由して公安委員会へ届け出る必要があります。受付の運用は所轄によって異なるため、営業開始日から逆算して早めに相談しておきます。
「そのまま使える」は見積りで裏を取る
内見の印象だけで造作譲渡料の妥当性は判断できません。追加で必要な工事を業者に見積もってもらい、造作譲渡料・内装工事費・保証金・運転資金を合計した総額で、他の物件やスケルトン物件と比較してください。
あわせて、開業後の収支計画とセットで見ることをおすすめします。家賃は毎月固定でかかり続けるため、想定客数と客単価から逆算したときに無理のない水準かどうかが、物件を決める最後の判断軸になります。原価と人件費の考え方は飲食店のFL比率とは?目安・計算方法と改善の考え方で解説していますので、あわせてご覧ください。
物件選びの段階から相談したいとき
当社は創業2006年から飲食店の経営支援ひとすじで取り組んできました。新規開業のサポートでは、物件の検討段階から内装建築コストと採用経費を一括のパッケージとしてお預かりし、一元管理する形をとっています。居抜き物件を検討中で「この造作でいくらかかるのか」「この立地で想定した業態が成り立つのか」を第三者の目で見てほしいという段階からご相談いただけます。
サービスの内容は飲食店の新規開業サポート、ご相談の進み方はご相談の流れのページをご覧ください。初回のご相談は交通費のみでお受けしています。

