メニュー改定の進め方|時期の決め方と5つの手順
メニュー改定は「そろそろ変えたほうがいい気がする」という感覚で始めると、品数だけが増えて仕込みが重くなり、粗利は変わらないという結果になりがちです。先に決めるべきは、いつ手をつけるかの判断材料と、何を基準に残す・落とすを決めるかの2つです。ここでは、メニュー改定を検討するタイミングの見分け方と、実際の進め方を5つの手順に分けて整理します。価格表示のルールなど、改定のときにあわせて確認しておきたい点にも触れます。
メニュー改定を考えるタイミング
改定の頻度に決まった正解はありません。季節ごとに一部を入れ替える店もあれば、数年に一度大きく組み替える店もあります。周期で決めるより、次のようなサインが出ているかで判断するほうが実務的です。
- 粗利が落ちてきた:仕入価格が上がったのに売価が据え置きのまま、という品が増えている。
- 品目が増えすぎている:季節メニューを足し続けた結果、常設が膨らみ、仕込みの品数と食材のロスが増えている。
- 注文が偏っている:数品に集中し、月に数食しか出ない品が固定化している。
- 客層や周辺環境が変わった:近隣にオフィスや住宅が増えた、競合が入れ替わった、昼と夜の比率が変わったなど。
逆に、繁忙期の直前や、スタッフの入れ替わりが続いている時期は避けたほうが無難です。新しいメニューは仕込みも提供も慣れるまで時間がかかるため、現場に余力がないタイミングで動かすと、提供時間の遅れという別の問題を生みます。
改定前に整理しておく2つのデータ
「なんとなく出ていない気がする」という印象で落とす品を決めると、実は粗利額の大きい品を消してしまうことがあります。手をつける前に、次の2つを数字で並べてください。
品目ごとの出数と粗利額
売上構成比だけで判断しないのがポイントです。単価が高く出数の少ない品は、売上構成比では下位に見えても、1食あたりの粗利額が大きく、店の利益を支えていることがあります。出数(何食売れたか)と1食あたりの粗利額(税抜の売価から食材原価を引いた額)、そしてその掛け算である粗利総額の3つを、直近3か月分ほど品目ごとに並べます。
そのうえで、出数も粗利額も高い品(看板)、出数は多いが粗利額が薄い品(集客用)、粗利額は高いが出ない品(見せ方に課題)、どちらも低い品(落とす候補)の4つに仕分けると、判断の根拠がはっきりします。原価と人件費の全体像の見方は飲食店のFL比率とは?目安・計算方法と改善の考え方で解説しています。
仕込みと提供にかかる手間
もうひとつが、数字に出にくいオペレーションの負荷です。その品のためだけに必要な食材はないか、仕込みに何分かかっているか、ピークタイムに出たとき何分で提供できるか。出数が少ないのに専用の仕込みが必要な品は、原価表に現れない形で人件費とロスを増やしています。
キッチンとホールの双方に、実際に負担になっている品を挙げてもらうのも有効です。現場が「これは出ないほうがありがたい」と感じている品は、たいてい数字にも表れています。
メニュー改定の進め方(5つの手順)
1. 残す・直す・落とすに仕分ける
いきなり新しい品を考えるのではなく、既存の品を3つに仕分けるところから始めます。残すは手を加えない品、直すは原価・盛り付け・見せ方を調整する品、落とすは今回外す品です。新メニューの考案はこの仕分けが終わってからにすると、品数が無秩序に増えるのを防げます。
2. 品目数の上限を先に決める
「1品落として1品足す」ではなく、改定後の総品目数を先に決めてしまう方法をおすすめします。上限が決まっていると、新しい品を入れるために何を外すかという議論が自然に発生します。厨房の人数、冷蔵庫の容量、ピークタイムに回せる工程数から逆算すると、現実的な上限が見えてきます。
3. 看板商品は最後に触る
その店を選ぶ理由になっている品は、改定の対象から先に外しておきます。原価が上がっていても、量や構成を変えると来店動機そのものを損なう可能性があるためです。看板の見直しが必要な場合も、周辺の品を整えてから最後に検討し、変更するなら理由を説明できる形にしておきます。
4. 価格表示と告知を整える
メニューブックの差し替えだけでなく、店頭の看板、券売機、POSやレジの商品マスタ、公式サイト、地図サービスの登録情報、デリバリーやテイクアウトの掲載内容まで、価格を出している場所をすべて洗い出します。レジのマスタは更新が漏れやすく、会計時にそのままクレームになるため、改定日の前日までに反映しておきます。ここが揃っていないと、「サイトに載っている値段と違う」というクレームの原因になります。価格表示のルールについては次の章で整理します。
5. 改定後に同じ指標で検証する
改定して終わりにせず、改定前に並べたのと同じ指標(出数・粗利額・粗利総額)で、2週間から1か月ほど後に再集計します。狙いどおり出ている品、思ったより出ていない品が分かれば、次の小さな修正につながります。改定前のデータを残しておくことが前提になるので、手順の最初で控えておいてください。
価格表示で確認しておきたいこと
メニュー改定は価格の表示を作り直すタイミングでもあります。国税庁の説明では、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合、消費税額を含めた価格(税込価格)を表示することが義務付けられており、店頭表示やチラシ広告など、どのような表示媒体かは問われないとされています(出典:国税庁ホームページ「No.6902 『総額表示』の義務付け」)。
店内飲食とテイクアウトを両方扱っている場合は、適用される税率が異なるため、表示の方法にも整理が必要です。国税庁のQ&Aには、平成30年(2018年)5月に消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁が連名で公表した考え方をもとに、価格設定に応じた表示方法が示されています(出典:国税庁ホームページ「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の価格表示の章)。店内飲食とテイクアウトで税込価格を変える場合は次の2つです。
- 両方の税込価格を表示する:メニューに店内飲食とテイクアウトの2つの価格を並べて書く方法。
- どちらか片方のみ表示する:同Q&Aでは、片方のみを表示してももう片方を表示しないこと自体が消費税法第63条に違反するものではないとされています。ただし、テイクアウトであることを明瞭に表示せずに安いほうの価格だけを出すと、店内飲食の価格が実際より安いと誤認させ、景品表示法第5条第2号が禁止する表示(有利誤認)に該当するおそれがあるとも書かれています。同Q&Aでは、税込価格が異なる場合は、お客様の意思表示により異なる税率が適用され税込価格が別途計算されることがある旨を、店舗内の目立つ場所に掲示するなどして注意喚起を行うことが望ましい、ともされています。
もう1つが、税抜価格を調整して同一の税込価格にする方法です。テイクアウトの税抜価格を上げる、または店内飲食の税抜価格を下げることで、表示する税込価格を1つに揃えます。この場合でも適用税率が異なることに変わりはないため、同Q&Aでは「全て軽減税率が適用されます」「消費税は8%しか頂きません」といった表示を行うことはできないとされています(当時の根拠として消費税転嫁対策特別措置法と景品表示法が挙げられていますが、前者は2021年3月末に失効しており、現在は景品表示法の観点から見ることになります)。テイクアウトの価格を店内飲食に合わせて値上げする場合は、消費者から問われた際に合理的な理由を説明することが考えられる、とも書かれています。
適用税率を判定するための意思確認については、「テイクアウトの場合はお申し出ください」といった掲示により行うなど、営業の実態に応じた方法で差し支えないものとされています。
なお、これは表示方法の考え方を示したもので、個別の判断は店舗の状況によって変わります。判断に迷う場合は、管轄の税務署や顧問の税理士にご確認ください。
メニュー改定を相談したいとき
当社は創業2006年から飲食店の経営支援ひとすじで取り組んできました。業態開発・商品開発では、和食・洋食・中華それぞれの分野でミシュランの星を獲得した実績を持つシェフが複数名在籍しており、ご相談いただいたジャンルの専門シェフが担当します。1品だけのご相談にも対応しています。
改定したメニューを現場で回すためのオペレーション整備やスタッフ研修は経営改善・各種研修で扱っています。進め方はご相談の流れのページをご覧ください。初回のご相談は交通費のみでお受けしています。

