飲食店でアルバイトが定着しない5つの原因と対策
アルバイトが続かない状態が長引くと、募集の費用と、教える側の時間が毎回かかり続けます。ただ、定着しない理由は「最近の若い人は続かない」の一言でまとめられるものではありません。多くの場合、原因は受け入れの手順、シフトの決め方、評価の伝え方といった、店側で変えられるところにあります。ここでは、飲食業のアルバイトがどのくらい入れ替わっているのかを公的な統計で確認したうえで、定着しない店に共通する5つの原因と、店内で取り組める直し方を整理します。
飲食業のアルバイトはどれくらい入れ替わっているのか
まず、自分の店だけの問題なのかどうかを、業界全体の数字で確認しておきます。厚生労働省が公表している令和6年(2024年)の雇用動向調査では、パートタイム労働者の離職率は「宿泊業,飲食サービス業」が29.9%で、調査対象となった16の主要産業のなかで最も高くなっています。宿泊業を含む区分ではありますが、産業計のパートタイム労働者の離職率が21.4%ですから、業界全体として入れ替わりが多い環境だといえます(出典:厚生労働省ホームページ「令和6年雇用動向調査結果の概況」)。
あわせて見ておきたいのが入職率です。同じ調査で、パートタイム労働者の入職率も「宿泊業,飲食サービス業」が33.3%で最も高くなっています。一般労働者でも入職率21.2%が最も高く、離職率は18.1%で2番目です。つまりこの業界は「人が集まらない」というより、入ってくる人も多いが、それに近い勢いで出ていく構造になっています。
この構造を前提にすると、採用の回数を増やすより、入った人が残る確率を上げるほうが負担は軽くなります。同じ人数を維持するために年に何回募集をかけているか、その費用と教育にかかった時間を一度合計してみると、定着に手を入れる価値が見えやすくなります。
アルバイトが定着しない店に共通する5つの原因
辞める理由は人それぞれですが、店側の要因に絞ると、次の5つに集約されることが多くあります。
- 最初の数回のシフトで放置されている:初日に誰が教えるかが決まっておらず、忙しい時間帯に立っているだけの時間が生まれる。ここでの居心地の悪さが、そのまま「来週から入りづらい」につながります。
- 教える内容が人によって違う:先輩Aに習ったとおりにやると先輩Bに直される。本人にはどちらが正しいのか判断できず、自分が悪いのだと受け取ってしまいます。
- シフトの決め方・変え方が不透明:希望を出しても通る基準が分からない、確定が直前になる、いったん決まったシフトが連絡なく変わる。生活の予定が立たないことは、辞める理由として無視できない重さを持ちます。
- できるようになったことが待遇に反映されない:時給が上がる条件が示されていないため、頑張っても変わらないという受け止めになる。金額の多寡より、基準が見えないことのほうが効いています。
- 辞めた理由を店が把握していない:「なんとなく合わなかった」で処理してしまい、同じ理由での退職が繰り返される。改善が回らない最大の原因がここです。
3つ目に挙げたシフトと労働条件については、公的な調査でも裏づけがあります。前掲の雇用動向調査では、全産業の転職入職者が前職を辞めた理由として、女性は「その他の個人的理由」を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%で最も多く、前年からの上昇幅(1.7ポイント)も最も大きくなっています(男性は同項目が8.6%)。飲食業だけを取り出した数字ではありませんが、シフトや休日の決まり方が離職の引き金になりやすいことは押さえておきたいところです。
裏を返せば、この5つはいずれも仕組みで直せるものです。以下では、取りかかりやすい順に手順を示します。
入って最初の1か月の受け入れを作り直す
定着の分かれ目は、多くの場合、入店から1か月以内にあります。ここに集中して手を入れるのは、費用をかけずに取り組みやすい方法です。
初日に「誰が教えるか」を決めておく
シフト表に新人の名前を入れる段階で、その日の指導担当を1人決めて本人にも伝えておきます。担当が決まっていないと、全員が「誰かが見ているだろう」と考えて誰も見ない状態になりがちです。担当者には、その日は自分の持ち場が少し遅れても構わないと事前に伝えておくと、実際に手が止められます。
最初の2週間で覚えてもらう仕事を絞る
初日から全体の流れを説明すると、情報量が多すぎて何も残りません。最初の2週間で単独でできるようにする仕事を3つ程度に絞り、そこだけを繰り返してもらいます。「今日は何ができるようになったか」が本人に分かる状態をつくることが目的です。覚える順番を紙に書いて渡しておくと、指導者が交代しても内容がぶれません。
1か月目に10分の面談を入れる
入店から1か月前後で、10分ほどの短い面談を予定に組み込みます。困っていること、シフトの希望と実際のずれ、次に覚えたい仕事の3点を聞くだけで十分です。辞める意思はその前から表れていることがあるため、この時点で拾えれば手を打てます。面談の内容は簡単に記録しておき、次の新人の受け入れに反映させます。
シフトと労働条件のルールを先に決める
シフト制で働く人の雇用管理については、厚生労働省が留意事項をまとめており、令和8年6月19日に改正されています。トラブルを防ぐための考え方が具体的に整理されているので、自店の運用と突き合わせておくと安全です(出典:厚生労働省ホームページ「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」)。
労働条件通知書に「シフトによる」とだけ書かない
労働契約の締結に際して労働条件を明示することは労働基準法第15条第1項が定めており、「始業及び終業の時刻」や「休日」といった具体的な項目は同法施行規則第5条に定められています。前掲の留意事項では、この点について「単に『シフトによる』と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です」とされています。休日についても、曜日が確定していない場合は設定にかかる基本的な考え方を明示することが求められます。
シフトの作成と変更の手順を決めておく
同じ留意事項では、「使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、使用者と労働者で話し合ってシフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられます」とされています。挙げられているのは、シフト表の作成にあたって事前に本人の意見を聴くこと、確定したシフトを通知する期限と方法、確定後に変更する場合の期限と手続きなどです。あわせて、1か月あたりの目安となる労働日数や、労働する可能性がある最大の日数・時間帯を、あらかじめ話し合って決めておく方法も示されています。
実務的には、希望提出の締切日、確定して知らせる日、変更したいときの連絡先と期限の3つを紙1枚にして掲示するだけでも、不満は出にくくなります。決まっていないから不満が出るのであって、基準があれば希望が通らなかった回も納得されやすくなります。
休憩と有給休暇の扱いを確認する
休憩は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を労働時間の途中に与える必要があります(労働基準法第34条第1項)。留意事項では、いつ就労の要求があるか分からない状態で待機している「手待時間」や、来客対応で実際に労働した時間は休憩時間として扱えないとされています。休憩に入ったはずが結局レジに立っていた、という運用は見直しの対象です。
年次有給休暇も見落とされがちです。1週間の所定労働日数が4日以下(または1年間の所定労働日数が216日以下)で、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満の労働者には、所定労働日数に応じた日数を与える必要があります(労働基準法第39条第3項)。この30時間という要件は見落としやすく、たとえば週4日でも1日8時間で週32時間になる人は比例付与の対象ではなく、通常の労働者と同じ日数になります。また留意事項では、あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に年次有給休暇を付与しないことは認められないとされ、算出しがたい場合は雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数などを用いる方法も示されています。
制度が正しく運用されているかどうかは、働く側から見て店の姿勢が最も分かりやすい部分です。なお、個別の運用が適法かどうかは勤務の実態によって判断が変わるため、迷う場合は管轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
定着しているかを数字で見る3つの指標
感覚で「最近は落ち着いた」と判断すると、悪化に気づくのが遅れます。次の3つを月ごとに記録しておくと、打ち手の効果が確認できます。
- 入店3か月以内に辞めた人の割合:受け入れがうまくいっているかを最も早く映す指標です。ここが高い場合、原因は採用ではなく初期教育にあります。
- 在籍者の平均勤続月数:全体の入れ替わりの速さを見ます。ベテランが数名いると平均が引き上げられるため、中央値もあわせて見ると実態に近づきます。
- 1人採用するのにかかった費用と時間:募集費を採用人数で割った金額に、面接と初期教育に使った時間を人件費に換算して足します。定着が改善したときに、いくら浮いたかを金額で示せます。
人件費全体のなかで教育や採用のコストがどう位置づけられるかは、売上に対する原価と人件費の比率とあわせて見ると判断しやすくなります。考え方は飲食店のFL比率とは?目安・計算方法と改善の考え方で解説しています。
なお、ここで挙げた指標は自店の推移を追うためのもので、他店と比べるためのものではありません。営業時間や業態によって適正な水準は変わるため、前月・前年同月の自店の数字を基準にしてください。
出典:厚生労働省ホームページ「令和6年雇用動向調査結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf)、同「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf)。本記事では、これらの内容を要約・編集して紹介しています。
採用と定着をあわせて見直したいとき
当社は創業2006年から飲食店の経営支援ひとすじで取り組んできました。人財の採用・定着サポートでは、「何人採用できたか」ではなく「何人残っているか」で採用を見る「定着単価」の考え方をもとに、人財のご紹介と、迎える側の体制づくりをあわせてご提案しています。人財のご紹介(有料職業紹介)はグループ会社の株式会社ウーヴルコンサルティングが行います。
新人教育の手順づくりや店長向けの研修は経営改善・各種研修で扱っています。進め方はご相談の流れのページをご覧ください。初回のご相談は無料でお受けしています。


